ブランコ。


「車、冷房かけてくるから」


僕は苦笑いしながら車の方へ向かい、暑さのせいか、冷や汗なのか(たぶん両方)、大量にかいた汗で張り付いたシャツを背中から引き剥がした。



エンジンをかけ、少し車の窓を開けてエアコンを最大にする。

そして、ドアにもたれてタバコに火を点ける。

先ほどの緊張をタバコの煙と共に吐き出し、僕はリエの寂しそうな笑顔について考えていた。



車内が十分に冷えたのを確認して、僕は車に乗り込む。

手招きしてリエを呼ぼうと思ったが、思い直して、車をパスタ屋の玄関に横付けする。

今日はなんだかおかしいし、色の白いリエは、紫外線に当たると、直ぐに赤く腫れてしまうから、今日だけはサービスだ。


(……落ち込んで……いる?)


そう言えばリエと出会ってから、彼女が暗い表情をしているのをはじめてみた。

いつも元気で、たくさんの人に囲まれて、ケラケラ楽しそうに笑っている、というのがリエを知っている人なら、一様に持つ印象だと思う。

まあ、やたらとその輪に、僕を引きずり込もうとするのは、ありがた迷惑なのだが。
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