ブランコ。
06 特殊な事情
目の前の階段を、ダンボール箱を抱えた境が上っている。
別に下から見て、何かが見えるというわけではないが、やはり上りきってしまうまで待つべきだったと、ちょっと後悔している。
他の女性社員は、ファイルを四・五冊だけ持って上っていたのに、境は重たいダンボールを腕まくりまでして運んでいる。
仕方がないので、なるべく上を見上げないようにして上ろうと、ダンボール箱を抱えなおした。
わざとゆっくり上っていってたのだがすぐに追いついてしまった。
目の前にスラっと伸びて、太くもなく細くもない、白いふくらはぎが見えたことで気がついた。
少し、見とれてしまった。
少しだけ。