ブランコ。
「よう」
そう言うと、男は頬に嫌らしい笑みを貼り付けながら、車内にいる僕らのことを舐めるように見まわした。
表情は笑っているが、縁無のメガネの奥の神経質そうな目は、僕らのことを値踏みするように、探るように、鋭い視線を投げかけてきた。
一重の切れ長の目は、心の奥の秘密までも掴もうとする、そんな気味の悪さを感じた。
同じ会社の山岸。
確か僕らより三つ年上だったはずで、地元の国立大学を卒業した後、僕らの会社に入社してきた。
だから、高校を卒業して入社した僕からすると、入社時期はひとつ後輩になる。
最初、お互いの年齢がわからないうちは下手下手に出ていたコイツも、一年が経ち、僕の年齢もわかると急に先輩風を吹かせ始めた。
本当は僕が先輩なのだが。