ブランコ。
僕は10号のボールが置いてある場所へ行き、みんなが一生懸命3つの穴に指を突っ込んで自分に合ったボールを探しているのを横目で見ながら、無造作に目に付いたボールを手にした。
この10号というサイズは手の小さい僕にはちょうどいいのだが、女性がもっとも使うサイズらしく、ゲームの最中、必ずといっていいほど行方不明になる。
だから、いちいち吟味して探す必要がないのだ。
どうせ他の誰かが僕のを使うし、僕も他の誰かのボールを使うことになる。
だから僕は、周りのみんなの様に真剣にボウリングのボールを探したことがない。
僕は自分のボックスにボールを置き、先輩たちが座っているテーブルへと近づいて行った。
先輩の元にはさっきから、次々と男性社員が話をしに来ている。
まさに会社のアイドルだ。
一人一人に丁寧な応対をしながら、一瞬僕をチラっと見た先輩は、少し困ったように眉を曇らせていたように思える。
僕は他の男性先輩社員の邪魔にならないように、先輩のテーブルには向かわず、そのまま自分のボックスへと帰った。