ブランコ。
自動販売機は直ぐに見つかり、僕はジーンズの中にあった五百円玉を確認しながら車の外に出た。
リエはゆっくりとこちらを向き、次の瞬間、急に朝目覚めたような顔になって、慌てて車を降りてきた。
「なんか飲む?」
自動販売機の方を指差し、そちらの方向へ歩きながら僕はそう言った。
リエは無言のまま小走りで追いかけてきて、僕のシャツの裾を掴んだ。
僕は何も言わず、そのまま自動販売機の方へ歩いていく。
リエも何も言わず、そのままついて来る。
少し俯き加減で僕のシャツの裾を握ったままで。
きっと妹がいたらこんな感じなんだろうなと、少し嬉しいような恥ずかしいような、そんな変な気分を味わいながら、これを目撃されれば、また風当たりが強くなるかな、とパスタ屋から見ているはずの、山岸の悔しそうな顔を思い浮かべていた。