ブランコ。
09 電話

その時だった。

静まり返った車内に電子音が鳴り響く。

僕の携帯電話の呼び出し音だ。

僕は内心、ちょっとだけほっとしながら、携帯電話のディスプレイを確認した。


『森田千秋』


先輩からだった。

リエにとって大事な話の途中だったし、先輩からの電話が留守番電話に切り替わるのを待とうと思った。

まあ、話の相手がリエでなかったとしても、僕は取らなかったと思う。



僕が携帯電話をジーンズの後に戻そうと体を捻り、手を伸ばした時だった。

リエが僕のその手を押えた。

そうしておいて(自分ではディスプレイを確認せず)、僕に口の形だけで(誰?)と聞いてきた。

僕はディスプレイをリエに見せる。

リエは一瞬迷ったような表情を見せた後、ディスプレイに表示された文字を確認し「出て」と僕に言った。
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