ブランコ。
10 意固地
「もしもし、高梨です」
結局、あの後リエの話を聞き、ついでに晩飯まで奢らされて帰ってきた。
話をしたので安心したのか、リエは帰りの車中、ずっと喋りつづけていたが、急に静かになったと思ったら、隣で寝息を立てていた。
僕はクーラーを緩め、来ていたシャツを信号待ちの間に脱ぎ、リエにかけてやった……と、こういうことを出来るような男ならば、きっとモテるんだろうなあと思いながら、助手席の窓を全開にして、リエを起した。
風でボサボサになった頭を掻きながら、寝ぼけたような顔をしてリエは帰っていく。
ルームミラーで確認すると、リエは僕が曲がり角を曲がるまで手を振っていた。
たぶん、明日には自分が手を振っていたことなんて覚えていないだろう。
それよりもちゃんと家に入っただろうか?
僕は、今日最後のサービスとして、リエの家の前をもう一度通る。
家の前には人影はない。
普段だったらこんなことはしないが、歯ブラシの件もあったので、ちょっとだけ心配だった。