ブランコ。

僕は窓を少し開けた。

風呂上りで火照った肌に風が気持ちいい。

そして、タバコを咥え、火を点けた。



「はい。同僚と飯を食いにいく。ただ、それだけです」

「なるほど。では、私とだって、先輩とご飯を食べに行くだけ、なのでは?」

「いえ、美穂さんには彼氏がいらっしゃいますので」

「ん? 同僚とご飯を食べに行くだけだから、それはデートではない、という定義だったら、私に彼氏がいようと、それはデートではないので、問題はないのでは?」

「いえ、僕自身のモラルの問題です」

「モラルねえ……」



美穂さんはそこまで言うと、しばらく言葉を切った。

携帯電話のノイズの向こうから、カランと氷とコップがぶつかるような音が聞こえてくる。

飲物でも飲んでいるんだろう。
< 80 / 260 >

この作品をシェア

pagetop