ブランコ。
僕は窓を少し開けた。
風呂上りで火照った肌に風が気持ちいい。
そして、タバコを咥え、火を点けた。
「はい。同僚と飯を食いにいく。ただ、それだけです」
「なるほど。では、私とだって、先輩とご飯を食べに行くだけ、なのでは?」
「いえ、美穂さんには彼氏がいらっしゃいますので」
「ん? 同僚とご飯を食べに行くだけだから、それはデートではない、という定義だったら、私に彼氏がいようと、それはデートではないので、問題はないのでは?」
「いえ、僕自身のモラルの問題です」
「モラルねえ……」
美穂さんはそこまで言うと、しばらく言葉を切った。
携帯電話のノイズの向こうから、カランと氷とコップがぶつかるような音が聞こえてくる。
飲物でも飲んでいるんだろう。