ブランコ。
02 美穂
「ねえ、この後、お食事でもどうかな〜?」
ボウリングが終わった後、先輩は僕を食事に誘ってくれた。
僕は、「ああ、いいっすね!」と答えながら、そっと気づかれないように周りを見渡す。
ハイエナのようにこちらの会話に聞き耳を立てていた男性社員たちがどっと集まってくるはずだ。
先輩と遊びに行こうと。
僕はこの、いつもの光景に少し面倒を感じた。
だけど、彼らも悪気があってのことではない。
僕も人の恋路を邪魔するほど野暮じゃない。
ただ、先輩に対して、とりとめもないTVの話をしたとしても、ちょっと肩を押されるといった何気ない仕草をされたとしても、そのひとつひとつ、一挙一動作を監視されて、敵視するのだけは勘弁して欲しかった。
この後の食事の場所へ行く算段だってそうだ。
彼らが一番注目していることは、『先輩が誰の車を選ぶか?』なのだ。
たかがボウリング大会なのに、駐車場を埋める我が社員たちの車は、明日が雨だというにもかかわらずピカピカに輝いていた。
たぶん、室内もすごくキレイなんだろう。
そんな駐車場の片隅で、ドロドロに汚れた僕の車だけがかわいそうに見えた。