ブランコ。
「ビクつくってことが大切なんです。わかりますか?」
「『恐れ』を抱く……ということでしょうか?……」
「そうです。やっぱり君は……」
課長は嬉しそうな顔をしていた。
自分の話に興奮したのか、最初よりもずっと目が潤んでいるように見えた。
だけど、課長との会話はそこで終わった。
別の先輩社員がお酌に来たからだ。
そして、送別会が終わり、みんなが散会するときに、
「そういった人間を探しなさい。だけど、そういった人間は腐り始めるのも早い。だから、早く見つけてやって、その腐りやすい人間を大事にしなさい。きっと君の味方になってくれるから。『恐れ』を忘れないようにね」
と僕の耳元で囁いて、スキップしながら帰っていった。