下僕系男子
まばゆい光を放つ太陽の下には似合わない、色白の肌。
目を見張る余裕も、唾をのみ込む余裕もなくなった。
「み、みやびちゃん?」
「ちゃん付けはやめていただけるとありがたいです……」
慌てて口を押さえる。
まわりがみやびちゃんと呼んでいるため、自然とこぼしてしまった。
「あの、本当に待たせてすみません!」
凄まじい速さで頭を下げられて、呆然とする。
待たせて、ということは手紙の差出人はみやびということだろうか。
いろいろな思考が駆け巡り返す言葉を失っていると、みやびが遠慮がちに頭を上げた。
「あの、手紙を読んで来てくれたんですよね……?」
「へ。……はっ、はい!」
清潔感溢れる、清楚な手紙だった。
きれいな文字だった。
みやびは安心したように笑みを浮かべ、胸を撫で下ろした。
「よかった。読んでなかったらどうしようかと……はっ。それで、話なんですが!」
相手がみやびとなると、告白という可能性は大幅に減った。
みやびのような男子が自分を好きになるとはとても思えない。
少し残念な気もするが、侑の悪戯だったという落ちよりかはよかったと考えよう。
「私、早坂くんに何かしてしちゃったかな」
カツアゲとか。
全くした覚えはないけど。
「ち、違います!……いや、違くはないですけど」
カツアゲではない何かをしてしまったらしい。
思い当たる節がないことが怖い。
自分では気付いていないうちに酒を飲んで酔っ払って、天使の顔と呼ばれる顔に傷をつけてしまって、慰謝料の請求に来たとか?
暑さのせいではない、別の汗が滲んできた。
「実は、僕――」
続きを聞くのが怖くて思わず目をつむると、吉か凶か昼休み終了五分前を告げる予鈴が鳴った。
「あっ」
「予鈴鳴っちゃったね!授業行こうっ」
「え、あの!」
みやびの声から逃げるように屋上を出て、体育祭のリレー以上の力を出して階段をかけ下りた。
ごめんなさい、早坂くん。
心の中で、何度も小さく呟いた。