堕天使のお気に入り。

「焔。思い出せたか?」

頭に直接響く優しい低音。

「あなた、誰なの?」

妖艶と表現するのが一番近い、

恐ろしいほど美しい者が言う。

「わたしの名は、ルキフェル。

 恐いか?」

「恐いわよ。

 何故、わたしの名前を知っているの?」

「それはここに来ればわかる。」

ルキフェルが

自身の拳で叩いたのは胸。

「恐いのに、行ける訳ない・・・」

「では、わたしが行こう。」

距離にして言えば、2メートル程度だった。

けれども返事をする暇もなく、

目の前にはルキフェルの胸。

身体はとうに腕の中に包まれていた。

165㎝はあるわたしがまるで

こどものように小さく思える。
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