雨の降る夜に
なんとか少女を落ち着かせようと言葉を探してみるが、うまい言葉が見つからない。

「あ、あの、僕がやったんじゃないんだよ。」

出来る限り優しい声で言ってみた。

だめだ、これじゃあ余計怪しまれるだけだろ、と言ってから後悔した。

少女はぬいぐるみをさらに強く抱きしめた。
そして・・・・・

「きゃーーーーー!!」

少女はしゃがみこんで、力の限りに叫んだ。
その後も2回続けて。

健二は思わず耳を塞いだ。
だめだ。たぶん病院中に響き渡ってる。みんなが起きてしまっただろう。そして部外者のオレを見たら・・・・・。

いや、説明すればきっとわかってくれる。少女の勘違いだと・・・。

健二の来た方の通路から大勢の足音が聞こえてくる。まだ音は小さいが。

どう説明しようと目を泳がせていた健二は、受付に置いてあるものに目を留めた。

なんだ、これ?

そして手に取った「それ」を、健二は明かりにかざしてみた。

これは・・・・・・

「どうしたんだ、久美ちゃん!」

病院の人々が来てしまった。

「あ、あ、あの人・・・」

その中の一人の女性が恐れながら言った。

「・・・・・ナイフ持ってる!!」
< 10 / 30 >

この作品をシェア

pagetop