雨の降る夜に


風が冷たく、少し身震いする。だからといって足を止める訳にはいかない。
ここから病院はもう見えない。
どのくらい走っただろうか。自分でも分からない。

ナイフを持っているところを見られた健二は、その場から走り去った。
もう言い逃れは通用しないと悟ったのだ。

どうやって病院から出たのかは覚えていない。
今どこに向かっているのかも・・・・。


今健二は暗いトンネルの中を疾走している。

健二はようやく我に返り、まだ手に持っていたナイフを捨て、携帯を取り出した。

電源を入れて、武弘たちに連絡しようとした時、携帯が震えた。

画面には松永武弘の文字。
指にうまく力が入らず、通話ボタンを押せない。

ようやく押せると、健二は携帯を耳にあてた。

「もしもし、健二?随分遅いじゃん。もしかして怖くなって途中で逃げたのか。」

武弘の声だ。
ふざけているのだろうが、それでも気持ちがだいぶ和らいだ。

そしてようやく足を止めた。

武弘に今の状況を説明しようとするが、呼吸が乱れていて話せない。

しばらく呼吸を整える。
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