雨の降る夜に
健二はゆっくり開いたつもりだったが、扉の軋む音が少し廊下に洩れてしまった。

そのため健二は数分動きを止めたが、誰も来ないことを確かめると再び扉を閉めた。

中は予想していたよりも暗かった。明かりは足元についている僅かな光のみ。
廊下は真っすぐに延々と続いていて、ずっと眺めていると吸い込まれそうな感覚にさえ陥りそうなほどだ。
足音を立てないよう気を付けながら廊下を進んでいく。

3分はかかっただろうか、ようやく階段が見えてきた。
普通に歩けば20秒もかからないのだろうが。

2階から明かりが洩れているのが健二の場所からもわかる。

健二は怖くなってきた。もしかすると失敗して自分は捕まるのではないか、と。
いや、病院なんていう場所だったら最悪幽霊が出ても不思議ではない、そんなことさえも考えてしまった。

しかし躊躇していても事は始まらない。健二は決心を固め、両頬をぴしっと叩いて自分に気合いを入れると、階段の一段目に足を伸ばした。
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