雨の降る夜に
しかし、突然2階から人影が現れた。
駆け足で降りてくる人影に驚いた健二は慌てて階段の横に身を隠した。

人影は健二の脇を素早く通り抜けていった。

そして真っすぐ伸びる廊下を走り抜けていく。

あれ、と健二はふと思った。

明かりがほとんど無かったため、はっきり顔が見えたわけではなかったが、どことなく翔吾に似ている。


見間違えただけだろうか、翔吾がこんな所にいる訳が無いじゃないか。
髪だって翔吾のよりも短い。いや、髪なら切ればどうにでもなるか。

健二がそんな事を考えていると、人影がこちらを振り返った。

二人の目が合った瞬間、その人影は唇の左端をつりあげて微笑んだように見えた。

そして人影は廊下を右に曲がって、姿を消した。


健二は僅かだが悪寒を感じた。なぜオレに微笑みかけたんだ?
ただの幻覚か?そう思いたかった。

気味が悪かった。あれが誰であったとしても。


もういい、今のことは忘れようと大きく2、3回首を横に振った健二はまた階段を上り始めた。

もちろん、忘れられる訳はなかったが・・・・
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