雨の降る夜に
「なあなあ、さすがに遅すぎやしねえか?」

洋平は心配そうな口調で尋ねる。

「そうだな、健二のやつ遅い。試しに電話してみっか。」

武弘はそう答え、ズボンのポケットから携帯を取り出し、電話帳から藤本健二の名前を選んで発信した。

プルルルッ、プルルルッ、プルルルッ、プルッ、ガチャッ。

4コール目でやっと電話に出た。

「もしもし、健二?随分遅いじゃんか。もしかして怖くなって途中で逃げたか。」

笑いを含んだ言い方だった。
その言い方に洋平も少し吹き出し、笑い顔になっていた。

しかし健二から返事は返ってこない。
代わりに、携帯の向こうからは荒い息遣いが聞こえてくる。

少し様子がおかしいと感づいた武弘はすぐに問い掛けた。

「健二、大丈夫か?何かあったのか?」

その言葉に洋平の笑い顔も消え去る。急に顔が強張った。

「たけ・・・ろ・、ちょ・・・や・・・ば・・・。・・・たすけ・・くれ・・」

プツッ、ツー、ツー、ツー、ツー。

何だ?健二のやつどうしたんだ?なんで電話を切った?

電波が悪かったのか、電話はとぎれとぎれだったが、武弘は辛うじて健二の最後の言葉を聞き取った。


助けてくれ、と・・・・
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