黒色女子を個人授業
眉根を寄せる私に、さらに念を押して彼は告げた。

「彼女は特別です」


随分含みを持たせた言い方をするじゃないか。

彼はパスタのフォークをくるくると遊ばせながら、ゆっくりと語り出した。

「ちょっと訳あって僕のような立場に立てる女性社員を作らなければならないんですよ。
ほら、うちの会社って女性の管理職が異常に少ないでしょう?
対外的にもよろしくないんで、急きょ擁立することになって。
候補は何人かいたのですがーー」

そこまで言うと彼はトマトソースが絡んだ大きな海老をフォークで突き刺した。

「彼女に的を絞りまして。
育て上げることになった訳です」

「どうしてあの子を?」

「僕の味方になってくれそうだったから。
……扱いやすそうだったからって言った方が正しいかな」

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