黒色女子を個人授業
切実な宮間の叫びに、それでも酒井はフォローの言葉を探した。必死に記憶を巡らせながら考える。

「……でもほら、一人、女性のマネージャーがいましたよね?
その人は出世できたわけだから、チャンスはあるんじゃないかな?」

すると宮間は軽蔑した口調で

「あの女は役員の不倫相手だよ」

そう告げると、開いたエレベーターを素早く降りて、酒井を振り切るように早足で歩いた。

酒井はかける言葉を見つけられないまま、彼女を追いかける。


「ね? わかったでしょ? そういうところなの」

数歩遅れて歩く酒井のことを振り返りもせず宮間は言った。

「でも、うちにきたらデザインできなくなっちゃいますよ……」

「私、まともな人たちと、まともに評価される部署で働きたいの。
……それに、今だって大したデザインやらせてもらってないんだから、一緒よ」


思いのたけを吐き出してすっきりしたのか、宮間は少しだけ冷静さを取り戻したようで、静かに、だけど意思の強い口調で言った。

「だから悪いけど天野さんにも容赦できないの。
私は自分をどんどんアピールしていかないと、次がないから」
< 295 / 510 >

この作品をシェア

pagetop