黒色女子を個人授業

「花山さん！　今年に入ってからの議事録の中身をこの納品物名で検索して！」

「は、はい！」

大城さんの剣幕に驚いて、花は慌ててデスクに戻り、言われた通り作業を始めた。

大城さんはPCを操作する花の横について、モニター画面を食い入るように見つめる。


「１件も、ヒットしません」

「……そういうことか……」

振り仰いで顔色をうかがう花に、大城さんは苦悶の表情で答える。


「……どういう、ことです？」まだ状況を飲み込めていない花が恐る恐る問いかけた。


「この納品物の依頼を『断った』という事実が記載されていないんです。どこにも」

大城さんは沈痛な面持ちで語った。

「口頭で断っただなんて言っても、相手が知らないと言い張れば終わりですからね。
依頼のメールが出ている限り、『断った』という事実がどこかの書面上に証拠として残されていなければ、こちらとしては用意する他ありません」