黒色女子を個人授業
夜の7時を過ぎた頃。

「明日もあることですし、今日は早めに帰りましょうか。
キリのいいところで解散してくださいね」

大城さんが私たちに向けて号令をかけた。


そんなことを言って、自分は必ずいつも最後まで残るくせに。

私たちに申し訳なく思っているからなのか、それとも、それこそが自分の役目だと思っているのか。

疲れた顔して笑って。

ちょっと痩せたのではないだろうか。

もう帰って休んでください、と言いたくなる。



――そう思っていたのは、私だけではなかったらしい。


フロアに残ったメンバーが私と大城さんと今井さんの三人になったとき。

「今日くらいお前も早く帰れよ」

今井さんが強い口調で大城さんに言った。


「先に帰ってください。私もすぐに帰りますから」大城さんが笑顔で答えると

「嘘だね。そう言ってひとりで夜中まで残るつもりだろう」今井さんはお前の考えなんてお見通しだとでも言うように、高らかに言い放った。


「ほーら今日はこれでお終いだ。全員一緒に帰るぞー」声を上げた今井さんに従って、私たちは帰り支度を整えた。

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