黒色女子を個人授業
……何を話せばいいだろう。


二人きりになるのは久しぶりだ。

緊張して、バッグを握りしめる手に力がこもる。


任せられても、どうしたらいいのかわからないよ、今井さん……!


ほどなくしてエレベーターがやってきて、無言の私たちを運ぶ。


「毎日遅くまですみませんね」

先に口を開いたのは大城さんだった。

エレベーターを降りてエントランスをゆっくりと歩きながら、少し後ろに着く私を気使う。

「……いえ。
私が出来るのは、これくらいですから」

言葉を選んだ結果、結局いつもの堅苦しい返答になってしまった。


もうちょっと気の利いたことを言いたい。

自分のコミュニケーション能力の無さを呪った。


「大城さんは、大丈夫ですか?
疲れているようですが……」

「疲れているように見える?」

私は顔を見上げて頷いた。


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