黒色女子を個人授業
「ごめん、ダメですね。
部下に気を使ってもらうようじゃ、上司失格だなあ」

そう言って申し訳なさそうに笑う大城さんは、上司というより一人の悩める青年に見えた。


「正直、疲れたし、しんどいよ。
こんなに周りに責められたのも初めてだ。
あれだけ偉そうなこと言っといて、情けないだろ?
こんなもんなんだよ」


初めて、大城さんが私の前で正直になってくれた気がする。

普段の彼の振る舞いは完璧で、本音や感情を読み取ることができなかったから。

何を考えて何に悩んでいるのか、もっと聞かせて欲しいと思った。


「情けなくなんて、ないですよ」

私は首を振る。

「しんどかったら、しんどいって言ってください。
話を聞くくらいならできますから」

私がそう言うと、彼は歩調を止めて、驚いたような顔でこちらを見た。


え……? 何?

私がこんなことを言うのは、そんなに意外?


そういえば彼には冷たい態度ばかりとってきたのだった。

慣れないことをしている自分に気がついて、急に恥ずかしくなってくる。


「……その、無理に話せってわけじゃないんですけどっ。
……でも、少しは気が楽になるかも、しれないし」

私が必死に自分で自分のフォローをしていると


「……ありがとう」

大城さんは笑ってくれたが、その笑顔はどこか寂しそうだった。

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