黒色女子を個人授業
「……え?」

まさか私からそんな台詞を聞くなんて思ってもみなかったのだろう、突然の誘いに大城さんは目を丸くした。


「だって、煮詰まったときこそ気分転換が必要だって、大城さん自分で言ってたじゃないですか!」

私はそう叫ぶと、彼の腕を思いっきり掴んだ。


「ちょ……!?」


彼を引っ張りオフィスビルの外へ出ると、車道の脇まで引きずり出し、走ってきたタクシーに向かって思いっきり手を振った。

あまりにも寸前で手を挙げられたものだから、タクシーは私たちを通り越したところで慌てて急ブレーキを踏んだ。

小走りでタクシーに追いつくと、後部座席に大城さんを押し込んで、続いて私も乗り込む。


「運転手さん! 出してください!」

「どこまでいかれますか?」

「ええっと……」


そこまで考えてなかった。

どこがいいだろう。

気分がスッキリする場所といえば……


急かされた状況でとっさに思いついたのはこの場所だった。

「……海まで!」

「海!?」

私の言葉を聞いて、大城さんは驚きの声を上げた。
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