黒色女子を個人授業
「ちゃんと海、感じられるよ」

大城さんは遠く暗い彼方をじっと見つめていた。


私は目を瞑った。


波と風の音が交互に響き渡る。震える空気。

潮の香りが身体いっぱいに広がって、海の気配を感じる。


閉じた瞳の奥には、ちゃんと海原が広がっていた。


「あのとき、怒鳴って悪かったよ」

彼は波音に向かって懺悔した。

「君を守りきれない自分を認めたくなかったんだ。
自分一人でみんなを抱えて歩けると思っていた。傲慢だよね」
< 324 / 510 >

この作品をシェア

pagetop