黒色女子を個人授業
やがて彼は顔を上げ

「ごめんね。寒いよね」

そう言って冷え切った私の手のひらを包み込んだ。

「暖かいところに行こうか」

私が頷くと、彼は私の手を取ったまま、波音に背を向けて歩き出した。



私たちは、等感覚に並んだ街灯の弱々しい明かりに照らされながら、車通りの少ない海沿いの道を歩いた。


繋がれたままの私の右手。彼は黙って歩き続ける。

私はその温もりを感じながら、何も言わずに彼のあとをついて行く。


やがて、ぽつぽつと古びた民家が見えてきた。


「お腹すいたでしょう?
せっかくだから、何か食べて行きましょうか」

そう言って微笑んだ大城さんは、いつもと同じ穏やかな表情をしていて、少しだけホッとした。


そして、固く結ばれたこの手にも。

彼の気持ち、彼の考えがこの手を伝わって流れ込んでくるようで。

私は今まで感じていた不安と緊張が嘘のように、穏やかな気持ちでいられた。
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