黒色女子を個人授業
普段日本酒を飲まない私は、想像以上に早く酔いが回った。


「本っ当に許せない! あのセクハラオヤジ!」

気分が良くなった私は、気がついたらおばちゃん相手にぶちまけていた。


「それでね、セクハラできなかった腹いせに、大城さんに嫌がらせしたんですよお! ひっどいでしょう!?」

私に指差された大城さんは、心なしか引き攣った笑みを浮かべながら、微笑ましく私を見つめていた。


「そいつはひどいねぇ! 男のクズだね!」

おばちゃんはノリノリで私の話に頷く。


私が日本酒の入ったグラスに手を伸ばすと「もうおしまい」大城さんがグラスを奪い取った。

「ええ!? まだ私全然酔えてませんよお」

「いや、もうべろんべろんだから……」

彼の言葉に私はぷうっと頬を膨らます。


そんなことないよ。

少し眠くなってきたけど。


このあとも私はおばちゃん相手に積もり積もった鬱憤を吐き散らかした。

次第に意識が途切れ途切れになり、気持ちの良いまどろみがやってきた。

「――でも、大城さんがいつも助けにきてくれるからぁ」

私は机に肘をついて、顎を乗せた。

「私は幸せなんですよねー」


そのあとのことはよく覚えていない。


< 330 / 510 >

この作品をシェア

pagetop