黒色女子を個人授業
私が顔を赤くしてうつむいたのを見て、彼はクスクス笑う。

「下の名前じゃ慣れない?」

「……慣れません」

「彩香も俺のこと下の名前で呼んでくれると嬉しいな」


下の名前……


私は彼の顔を見上げて、恐る恐る呟いた。

「下の名前って、何でしたっけ?」


「……本気で言ってる?」

肩に回した手がほろりと零れ落ちて、大城さんは絶望的な表情を浮かべた。

「いえ、あの、漢字は分かるんですけど、何て読むのかなあって常々思ってて……」

彼はショックを隠せないといった様子で、額に手を当てた。


「『遥か』に『大きい』と書いて、『はると』と読みます」

「は、遥大さん」

「……はい」

大城さ――遥大さんは、小さくため息をついて返事をした。
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