黒色女子を個人授業
時計は9時を回っていた。打ち合わせから戻ってきた今井さんの第一声。

「ずっと待ってたのか? 帰っても良かったのに」


はあ?

私、この人殴ってもいい?

怒りが沸々と込み上げてくる。


「だって今井さんが待っててって言うから!」

「そうだったっけ?」

「それにこの書類、今日中なんですよ!?」


私が声を張り上げると、今井さんは渋々書類を受け取った。

「仕方ねぇなぁ」

ペンを片手に口元を引き締めて、デスクに向き直る。


程なくして、彼の目付きが真剣なものに変わる。


集中したときの眼差し。

普段のだらしのない彼とは大違い。


私はしばらくそんな彼をぼんやりと見つめていた。

この人と一緒にいれるなら、残業も悪くないかなって思ってしまう。
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