黒色女子を個人授業
「頼むから、そんな目で見ないでくれ」

俺が目を逸らすと、彼女は俺の袖をきゅっと掴んだ。

逃がしてはくれない。


まずい、惹き込まれる。


「今井さんは私のこと、どう思ってるの?」

究極の質問がきた。

どうって。

大切な部下であり、放っておけない女の子であり

それから……


んなもん、言えるかっつーの。


「大切な部下だと思ってるよ」

俺は第一の選択肢を選んだ。

「それだけ?」

彼女の表情が明らかに落胆へと変わる。

「それだけ」

俺が念押しの一言を告げると、怒るでもなく泣くでもなく、やりきれない表情で瞳を伏した。

袖を掴んだ手がしゅるりとほどける。


見るに耐えられない。胸がぎゅっと捕まれた。
< 488 / 510 >

この作品をシェア

pagetop