黒色女子を個人授業
口の堅そうな天野から目的の話を聞きだすのは容易ではないだろうが、なんとか推理に繋がる断片だけでも拾えないだろうか。

「昨日、遅くまで大変だったみたいだな」

今思いついたかのごとく、さりげなく昨日の話題を振った。

「ちゃんと帰れたのか?
だいぶ遅かったみたいだけど、終電、間に合った?」

「ああ、うん! だいじょぶだったよ」

俺の問いかけに、彼女は至って明るく答えた。


それは嘘だ。

俺の目の前で駅とは逆方向のタクシーへ乗り込んで行ったのだから。

嘘をつくっていうことは、バレたらマズい何かがあるってことだよな。

少なくとも、二人でタクシーに乗り込んだ事実を俺には隠したいと思っているらしい。


「そう……」

彼女の言葉に、俺は考えを巡らせながらひとまず頷いた。


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