青空の下月夜に舞う
「ずっと見張られてっからさ。麻衣に話しかけらんなかったし」
クスクスと笑いながら。
「あ、俺、明日髪切るんだよね。麻衣どんなのが好き?」
髪に指を通す仕草に、肩が震えた。
サラサラの茶色の髪は、闇に紛れて黒くも見える。
その時。
「ぁ……」
私の口から思わず漏れた声。
聞こえるか、聞こえないか。
けれど、見事に雄大は私の声を拾う。
「今。誰に似てるって思った?」
「……っ、」
息を飲んだその時。
手に持つ携帯が震えた。
「あーあ。タイムリミットだ。麻衣。またね。俺に会った事。言ってもいいよ?」
ゆっくり走り去る車のテールランプを見送り、同時に止まった携帯の振動。
風の音だけが、私の周りを行き来する。
一人を実感し――――
やっと。
上手く呼吸が出来た。