青空の下月夜に舞う
「はあ?何であんたに歩くなって言われなきゃ……」
『どこだよ!』
ちょっ!何で私が怒られるの!
「どこって……コンビニ」
『お前馬鹿なの?』
「馬鹿じゃねえし。あんたよりテストいい点とれるし」
『激しく意味がちげぇ』
「口が悪い男だな。それがモテる要素か?少なくとも私はお断りだ。私は……」
『お前のタイプとか聞きたかねえよ。とにかくお前焼肉屋から右に行ったよな?お前家確か左だよな?』
確かに。
私の家……いや、元家か?
焼肉屋から左に曲がる。
だけど今日は右に行かなきゃホテルに着かない。
けれど……それがそんなに焦る事?
しかも私怒られてない?
「あの~」
『コンビニっつったら寿司屋の前か?』
「え~……」
『迎え行かせっから待ってろ!動くなよ』
「え!何それ!私心が完全においてけぼり……あ。切れた」
お前は私の彼氏かよ!
声を大にして叫びたいけど、ここは道端。
コンビニに戻んなきゃいけないの?
めんど。
てか何よ。迎えって。アイツ何様な訳?
頭の中で激しく抗議しながらも、素直に踵を返してコンビニに向かう。
――ガラガラガラガラ……
コンクリートが古いせいでかなり音が煩くて。
頭の中は訳が分からなくて、祐也の文句が並んでた。
だから気付かなかったんだ。
「……んっ……?!」
後ろから急に口を塞がれた事に頭がついていかなくて。
黒い大きな車に背中を押されて、無理矢理中に乗せられた。
ドアを閉める瞬間。
煩いバイクの音が聞こえたけど、覆い被さって来た男の人が怖くて。
「大人しくしろよ。男7人に敵わないって馬鹿でも分かるだろ」
横に座ったゴツい男の人に凄まれ、私は恐怖でただ頭をカクカクと縦に振るしかなかった。