青空の下月夜に舞う
「麻衣に渡してって。頼まれた」
「そっ、か……」
小さな息を漏らす。
けれど距離が近い……頭の中を全て見透かされている様で。
雄大の息が鼻にかかると、一瞬胸が苦しくなった。
「あ、麻衣ってさ……上原の、」
思い出した様に、口を開いた雄大。
声を発した名字は、祐也だ。
言葉を紡ごうと、した時だった……
雄大の視線が私から擦れた数秒後。エンジン音が遠くに聞こえ、近付いてくるのが分かる。
雄大が口にした“上原”。
更に大きくなる、“エンジン音”。
明らかに車ではない。
脳裏に浮かぶのは、意地悪な笑みを浮かべる祐也がバイクに跨がる姿。
「迎えが、来たんじゃねえ?」
再び私に戻された雄大の瞳は、私が幼い頃からよく見ていたものとは違っていた。
エンジン音が……止まる。
「~~~~~~~~!」
「ーーーーー!」
外で聞こえる、男の人の怒鳴り声。
無意識に雄大を見ると、ふんわりと笑いながら、
「麻衣、彼氏居るの?」
表情は笑ってるのに、目が笑ってない。
知ってる筈なのに、別の顔をした雄大に、声は出ず、首を横に振った。