彼に殺されたあたしの体
そう思ったって相手に通じるはずもない。


先生は両手をあたしの血で真っ赤に染めながら懸命に赤ちゃんを探した。


そして、手のひらにのるくらいの小さな小さな命を、見つけてしまったのだ。


「くそ……なんで俺がこんなことを……」


ブツブツと文句を言いながら先生はあたしの体から小さな命を引き離した。


その手には他の臓器も握られていて、めちゃくちゃに引っ掻き回されたのだということがわかった。


その時、初めてあたしの中で先生へ対しての怒りが生まれた。


今までのように好きだからという感情が、嘘のように消えてなくなって行く。


やっと我に返った。


そんな感じだ。


あたしは赤ちゃんを引きずり出し、透明な袋に詰めている先生をずっと睨み付けていた。


もちろん、表情は変えられないから、見ていた。ということだけれど。


先生の顔は土の色と血の色で染まり、そして恐怖で歪んでいる。
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