彼に殺されたあたしの体
あたしは死んだのだ。


だったらこんな土の中にとどまっていなくても、魂となって抜け出せばいい。


そして先生の車に事故でも起こさせてしまえばいいのだ。


世間ではよく心霊現象や呪いと言った名称で、死んだ人間には力があるような事を伝えている。


でも……でも、あんなのは嘘っぱちだ。


あたしは今先生の事が憎くて憎くて仕方がない。


それなのに、あたしの魂はまだ体にあり、呪い殺すなんて到底できるとは思えなかった。


死んだ人間は無力だ。


自分の力では何もできない。


涙が出るほどに悔しいのに、涙を流す事さえあたしにはできないのだ。


これほど歯がゆい気持ちになったのは、生まれて初めての経験だった。
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