彼に殺されたあたしの体
暗闇の中、あたしはあの絵を鮮明に思い出し、心の中で筆を握った。


透明な水面から見える小魚に色を塗る。


一見黒い背中に見えるけれど、太陽の光によってそれは色んな色に変化していた。


赤だったり青だったり、木々の葉が写り込んで緑色だったりする。


あたしは慎重に色を塗り重ね、小魚たちに命を吹き込んだ。


次は川辺の緑だ。


夏になって元気よく伸びた草花たちを色づけていく。


太陽の光をめいっぱい浴びて、堂々とした姿勢でそこに生きている植物たち。


心の中で描きながらあたしはふと思った。


さっきからあたし、太陽の光ばかりを意識している。


こんなに暗い中にいるから、きっとお日様に当たりたくて仕方なかったんだろう。


自分でも気づいていなかった深層心理を、絵を通して理解させられる。
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