彼に殺されたあたしの体
だから絵は好きだ。


人間のすべてを写す鏡と言うにふさわしい。


あたしは生きていた頃同然に心の中で絵を描いた。


力など入らないのに肩に力をいれ、食いしばることのできない歯をくいしばっていた。


それは本当に夢中になれる時間で、気が付けば自分の体は乾燥し始めていた。


あの醜いふくらみはなくなり、少し重たい地中動物が歩くと簡単に溶け落ちてしまうようになっていた。


いよいよ、体の形が失われつつあった。


土の重みが腐敗しきった皮膚を圧迫し、そこから骨が見えている。


骨は真っ白かと思いきや、肉や血によって少しピンク色に見えた。


頬骨がむき出しになり、残っていた右目がこぼれ落ちるのがわかった。


……闇だった。
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