彼に殺されたあたしの体
☆☆☆

憎しみというのは本人がどんなに隠していても、体の内側からにじみ出てきてしまうものである。


人を嫌うのはよくない事だ。


人を妬むのもよくない事だ。


そんな当然とも呼べる事が、実はとても難しいのである。


小さな頃から人は人として生きていくために、まずはいい事と悪い事を学ぶ必要があった。


言葉を覚えるよりも先に、つかまり立ちをするよりも先に。


いい事悪い事を教え込まれていたハズだった。


それなのに、それができない人間は沢山いた。


故意に人に危害を加えなくとも、誰かを傷つけてやりたいと感じたことならあるだろう。


テストで自分よりもいい点数をとった友人に、嫉妬を感じるときもあるだろう。


でも、それらは大抵の場合学んできた道徳によって説き伏せられていた。


醜い感情を素直に表に出すことはなく、自分の中で消化し、そしていつもと変わらぬ風にふるまうことができていた。
< 156 / 306 >

この作品をシェア

pagetop