彼に殺されたあたしの体
聞かれたくない。


バレたくない。


あたしの中であたしを守るためにはなにが一番得策なのか、あたしが一番知っていた。


それは誰にも言わないこと。


騒がない事。


彼女らの前では表情を作らない事。


反応を見せなければきっと彼女たちは飽きて、イジメなどやめてしまうんだ。


だから今はひっそりとしていたい。


ただそれだけだった。


「あれ? まだいたのか?」


そんな声が聞こえてあたしは振り向いた。


「……神田君……」


そこに立っていたのは背の高い神田君だった。


彼女はきっと神田君の事が好きなんだ。


神田君を前にしたとき、彼女はあたしをイジメなくなる。


そして目は輝き、口調が女の子らしくなる。


だから、神田君はあたしを救ってくれる人でもあった。
< 177 / 306 >

この作品をシェア

pagetop