彼に殺されたあたしの体
そう思い、あたしは口をつぐんだ。


「掘、靴は?」


自分の靴を履き替えようとした神田君が、ふとそう聞いて来た。


「あ……」


どうしよう。


なんて言えばいいんだろう。


1人困っていると、神田君が不意にあたしの右手を握りしめてきた。


突然の出来事にあたしはビックリして神田君を見つめる。


「どっか、隠された?」


神田君が静かに聞いてくる。


その声に心臓がドクンッと跳ねた。


彼女は神田君の前では必死でいい子を演じていたけれど、神田君はすべて見抜いていたのだ。


それはあたしにとって、少しだけ嬉しいことでもあった。
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