彼に殺されたあたしの体
そう思い、あたしは1日気を抜く事はなく彼女たちの様子をジッと観察していた。


あたしだけピリピリとした張りつめた1日を過ごし、そして何事もなく放課後が来た。


あたしは彼女たちよりも先に下駄箱へ向かおうとして、いち早く教室を出た。


と、その時だった。


「美彩ちゃん」


久しぶりに聞いたその呼びかた。


教室を出てすぐの場所で名前を呼ばれたあたしは、その場に立ち止まった。


そしてまるでヘビに追い詰められたカエルのように、恐る恐る振り向く。


教室の入り口付近に立っていたのは、ムッとした表情の彼女だった。


彼女に『美彩ちゃん』と呼ばれるのは久しぶりなことだった。


あたしは「はい……」と、かすれた声で返事をした。


「これ」


彼女はそう言い、カバンの中からあたしの靴を取り出したのだ。


それは切り刻まれてなんていなくて、綺麗なままの状態だった。


あたし少し戸惑った後、おずおずと自分の靴に手を近づける。

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