彼に殺されたあたしの体
あたしの魂はその状況に対応するまで時間を要した。


とにかく扱いにくかったのを思い出した。


右へ行きたいと思って右へ重心を傾ければ、そのままどこまでも右方向へ進んでいく。


止まろうとしてストップをかけても、まるで氷のリンクの上にいるように滑って止まれない。


少し体を傾けるだけでそのままゴロンっと、一回転してしまうようなものだ。


けれどそれは時間とともに慣れていき、あたしは自分の体をコントロールすることができるようになっていた。


右に体を滑らせて、止まりたい時には少し左へと重心を傾ける。


これですぐに止まることができた。


あたしは土の中でその動作を何度も何度も確認して、そしてようやく地上へと出た。
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