彼に殺されたあたしの体
それとも、死体を乗せたという恐怖から逃げたかったのだろうか。


どちらにしても、あの車はもう使っていないようだった。


それはあたしにとってどうでもいい事だった。


電車だろうが車だろうが、彼はあたしに殺されるのだから。


それだけは変えようのない未来なのだから。


やがて、電車がホームに滑り込んできた。


帰宅ラッシュで沢山の人たちが出入りする。


先生は列の一番最後に並んでいて、ゆっくりと進んで行く。


あたしは電車とホームの間にある隙間を見つめていた。


ジッと。


それは恋をする乙女のように、熱っぽく。


先生がホームから電車内へと足を踏み出した。


その一歩が……電車から外れ、ホームの隙間へと入り込む。
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