彼に殺されたあたしの体
あたしはその光景を笑いだしたい気分で見ていた。


そんな所に足を突っ込んでしまうなんて、なんてドジなの。


先生は一瞬キョトンとした表情を見せ、それから足を引き抜こうとした。


だけど抜けない。


なにをしても、どうあがいても足は抜けないのだ。


だって、あたしがそうしているから。


先生の足は挟まったままびくともしない。


次第に慌て始める先生。


だけど周囲の人間は誰もその異変に気づかない。


まるで先生の存在自体がそこにないかのようにふるまっている。


やがて、発車のベルがホームに鳴り響く。


「おい! 待ってくれ! 助けてくれ!!」


先生が大声で叫ぶ。


だけど誰も助けに来ない。
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