彼に殺されたあたしの体
先生の声は誰にも届かない。


手を伸ばせば乗客に手が届く位置にいるのに、誰も動こうとしない。


そしてついに、電車のドアは閉まり、ゆっくりと、そして確実に動き始めた。


先生のズボンのすそは電車の一部に引っ掛かかり、その事に気が付いた先生は一瞬にして青くなった。


動き出す電車と同じ速度で引きずられていく先生。


最初は置いて行かれまいと片方の足だけで飛び跳ねるようにして頑張っていたけれど、それもすぐに力付きた。


先生の体はホームに横倒しになり、それでもなお電車は走る。


「ぐあっ!」


という悲鳴が聞こえたかと思うと、先生の右腕が消えていた。


何かにぶつかってもげたのだ。


一瞬して無くなった右腕に、先生は口をパクパクさせて何かを言いたそうだった。


けれどそれも声にはならなかった。


ホームは途切れ、先生の体は地面にたたきつけられた。
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