彼に殺されたあたしの体
睦人君はなにも言わない。


でも、足音が止まったことで立ち止まってくれたことがわかった。


(また、ここへ来てくれる?)


あたしはそう聞く。


無理なお願いだということはわかっていた。


この土地には家が建つ。


工事が始まれば関係者以外ここへ立ち入ることはできないだろう。


「あぁ。きっと来るよ」


睦人君はよどみなくそう返事をした。


この答えにあたしはホッと胸をなで下ろす。


きっと、睦人君がここへ来る事はもうないだろう。


それでも、あたしの心は温かくなった。


(じゃぁ、またね)
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