彼に殺されたあたしの体
ドキドキするような作品も、沢山出ているだろう。


あたしの好きな水彩画の作家たちも、新作を発表したかもしれない。


それはどんな絵だろう。


見てみたいな。


きっと、素敵な絵なんだろうな。


あたしは見えている物を遮断し、再び心の中で絵を描き始めた。


生きていたころに見ていた鮮やかな風景を思い出す。


あたしはできるだけ色彩豊かな風景を思い出していた。


花が咲き、緑の葉が揺れ、空の青さと時々流れる白い雲。


あたしは心の中で沢山の色を使った。


赤、白、青、緑。


色を混ぜて、色を重ねて絵に重厚感を出していく。


だけど、黒だけは使わなかった。
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