彼に殺されたあたしの体
☆☆☆

あたしは黒を使わない絵を何枚も何枚も描き続けた。


春の野原だったり、夏の海だったり。


風景だけでなくそこには沢山の人を描いた。


人はみんな一様に微笑んでいて、その絵の中には幸せが満ちていた。


手をつなぐカップル。


小さな子供と遊ぶ父親。


友達同士で駆けっこをしている子供たち。


泣き顔は1つもなかった。


怒った顔も、困った顔も描かなかった。


それだけ、あたしは自分の笑顔を意識していた事になる。


徐々に出来上がっていく家を意識しないために、そこに家を建てる家族に怒りを覚えないためにも。


必要以上に幸せな絵を描き続けた。
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