彼に殺されたあたしの体
音だけでここまでの事がわかるなんて、我ながら感心するようだった。


目が見えない人も何年も同じ場所から動かなければ、このようにすべてを把握できるようになるのかもしれない。


最も、それは酷というものだけれど。


『少しは落着いて』


と言われた旦那さんは動き回るのをやめて、やっとリビングに落着いたようだ。


「女の子かな? 男の子かな?」


旦那さんの声が聞こえてくる。


それに対してクスクスと笑う奥さん。


「まだわからないわよ。すっごく小さいんだから」


「そっか、そうだね」


奥さんの声は落着いているが、旦那さんの声は早口でせわしない。


会話からして、この夫婦には子供ができたのかもしれない。
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